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導入事例紹介

Part2)心を開いて、自分を変える。

●今のままでは、ソンするぞ。
「スタートダッシュプログラム」が4月に修了してから1ヶ月後、恩田君に対する8ヶ月にわたる「フォロープログラム」が始まった。

1)1ヵ月後:今後の目標を設定するための個別面談
2)3ヵ月後:ビジネスマナーの振り返り研修&「つもりの自分」を確認するための個別面談
3)6カ月後:「自己評価と他者評価のギャップを埋める」ための個別面談
4)8ヵ月後:「帰属意識と目標意識を定着させる」ための個別面談

個別面談時は、事前シートに本人(恩田君)と育成担当者(下出氏)の双方が、意識と意欲の現状を記入。それをもとに、私(中司)が二人に個別に面談し、自己開発課題への実践状況の振り返りを含め、意識と意欲のチェック&トレースを行うというやり方で進めた。

ここで重要なのは以下の2点。

  1. 恩田君が現在の自分をありのまま認める勇気をもち、『こうなりたい』と心の底から思える自己開発目標を見つけること
  2. 当社担当者である中司とキャップ社育成担当者の下出氏(必要に応じて社長をはじめその他の人の協力も仰いで)が恩田君情報を共有し、効果的な役割分担をしながら、本人の意識との差を埋めるべく観察・指導・支援すること

そういう意味では恩田君との1回目の個別面談は、今後の当プログラムの成果が問われる重要な意味があった。私は東条からの報告や本人と下出氏の事前シートなどの資料を読み込みながら、恩田君にズバリと言った「今のままでは、ソンするぞ」「ジコチュウのその態度を改めるべきだ。自分を変えろ!」と。すでに実力も実績も兼ね備えていれば、オレ流も認められるが、お前はただの新人。それがキャップ社という組織で生きる道を選択したのだから、その組織で自分を活かすことを考えなくてはいけない。認めてもらって当たり前ではないのだ。にもかかわらず今のお前は、挨拶はできない(しない)、タメ口を聞く、謝罪しない・・・など、ただ態度の悪い若造だ。このままでは、キャップ社という組織の中で才能の発揮もできず、活躍の場も危うくなる、なにもトクすることはないと、ハッキリ告げたのだ。
正直恩田君は、最初怪訝そうに中司のことを見ていた。
「この人何熱くなってんのやろ?」「『態度を改めろ?』『自分を変えろ?』人のこと放っておいてくれや!」「オレは今まで親にも怒られたことなんかない・・・」と。ところが、しっかりと自分の目を見据え、他人である自分のために自分の体験談も含めて話をしてくれる中司を見ているうちに、なぜだか「この人に話をしてみたい・・・」という気持ちになっていった。そこで恩田君は、自分の両親が弁護士であること。弟も国立大学で弁護士を目指していること。子供のころから周囲からの「恩田君はご両親が立派だから・・・」と言われたり、勉強のできる弟と比べられることがたまらなくいやだったこと。周りにやいやい言われたくないから、無意識のうちにうっとうしそうな態度ややる気のなさそうな表情で相手を拒絶するようになっていったことをポツポツと語りだした。「今まで、親にもこれほど強く言われたことはなかった・・・」とつぶやいた恩田君の表情から、ほんの隙間程度かもしれないが心を開き始めた気がした。面談の最後には恩田君は私を見つめ、「中司さんだから約束します。絶対に自分を変えて見せます。変えたいのです!」と言った。面談が始まってから2時間が経過していた。

私は全力で彼をサポートしようと思った。

●ビジネスマナーに真面目に取り組む。挨拶もするように。
私との“約束”が契機となったのか、恩田君は、これまで全く気が入らなかったビジネスマナーの講習にも真面目に取り組むようになってきた。当社でビジネスマナー担当講師の田所美弥子によると、「挨拶の形もまだまだ稚拙だが、以前に比べれば、覚えようという気持ちが出てきた。また、明るくもなってきた」という。そのことを本人に伝えると、照れくさそうに「中司さんと約束したから」と話していたそうだ。

3ヵ月後の個別面談で私は恩田君と約束をした。その日の面談では自己開発への意欲が出てきた恩田君からこんな話があった。
「来年4月からのD社とのPJに僕参加したいんです。そのために出向することも構いません。技術的には厳しいところもあるけど一生懸命頑張ればやれると思うんです」と。珍しく熱く語る彼をある種冷静に見ながら私は彼に言った。「そのことを上司である下出さんには言った?」彼は黙って首を横に振った。「やりたいと思っていても口に出さなければないのと一緒じゃないか?受け入れられるかどうかは別の問題。まずはぶつけてみないと何も始まらない。それに僕は外部の人間。僕に言ってどうなる?ひょっとして僕から言ってもらおうなんて気持ちがあるのなら甘すぎるぞ!!」心を開いた相手に甘えてくるのはよくあること。私は心を鬼にして彼を突き放した。結果、面談の最後で、恩田君は私に、

  1. PJに参加するために必要な自己開発課題と課題解決プランを明確にすること
  2. 1を持ってPJに参加したい旨を今週中に下出氏に伝えること
  3. 必ずOKの約束をとりつけること
上記3点を約束した。恩田君の表情は晴れやかだった。

私は、キャップ社の社長と下出氏への報告の際上記約束の件も伝えた。「それは楽しみやなぁ~」と目を細めていた社長が印象的だった。にもかかわらず・・・。