●まるでお葬式のようだった研修初日。
キタヤマ製作所社員活性化プログラムは、20代後半から30代の社員を対象に、前半はリーダーの役割を理解するための研修会形式、後半はチームに分かれて工場内の問題解決に取り組み、最終日の報告会で具体的な成果を発表する形式で組み立てた。
そして、研修初日。開講は、終業時間後の午後6時からとなっていたが、5分前になっても誰も来ない。1分前になりようやくセミナールームのドアが開き、メンバーがぞろぞろと入ってきた。まるで葬列のような暗い雰囲気。席に着いた社員は皆一様に下を向き、その肩や背中からは“なにをさせられるのか・・・”という警戒心と、“社長の命令だから仕方がない”“鬱陶しいな”という表情が現れていた。
私はこの時、「この人達と1年間セミナーを続けていけるだろうか・・・?」と正直不安になった。
気を取り直してセミナースタート。でもメンバーは下を向いたまま。
東条「みなさん、聞いてる?顔あげましょうか?」と呼びかけた。
その瞬間だけ顔を上げるがすぐに下を向いてしまう。また、“山田さん”と問いかけても、俯きながらもごもごと小さな声で答えるばかり。このやりとりは何度も繰り返された。
◎セルフトーク(心の中の声や言葉)をプラスにして
参加する
◎シンプルな5つの行動を徹底する=「アクション5」
1:見る
(自分を、仕事を、職場を、他の社員をしっかり見よう)
2:感じる
3:伝える
(自分の考えや意見、感じたことは素直に口に出そう。それが、コミュニケーションの第一歩。自分の言葉が相手を傷つけてしまった時は、誠意を込めて謝罪しましょう。)
4:人の話を聞く・訊く
5:やってみる(言い訳はしない)
を徹底していくことを初回に伝えるだけではなく、自ら実践することをメンバーに見せることを通じて、この姿勢とシンプルな行動を徹底することの重要性を理解させるようにつとめた。
「中山さん、今何か言いかけましたよね!」「宮本さん、今のって言い訳ですよね!」などなど・・・。メンバー一人一人に対して、感じたことを伝え、話しかけ、しゃべらせるように努めた。すると、2回目、3回目と研修が進む中で、雰囲気が明るくなり、社員も楽しそうな表情に変わってきた。だが、「東条さんには、何でも言えるんですが⋯」と、まだ壁は厚い。彼らの職場は、アットホームといえば聞こえはいいが、馴れ合い所帯で他者評価が甘く、ホンネを言いあわない。互いが向上心を持って切磋琢磨する、本当の意味での仲間意識が稀薄だった。だが、研修を重ねるごとに、“自分の意見や考えを口に出していいんだ”“話さなくては、互いを理解することはできない”。そして、リーダーとして“自分のためにも、相手のためにも、会社のためにも、もっとものを言わなくては”という意識が、次第次第に芽生えてきた。前半の最終回(4回目)が始まる頃には、私自身メンバーに会うのが楽しみになってきていた。
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